本予測は、水産庁の「水産資源調査・評価推進委託事業」により、資源の合理的利用や操業の効率化を目的として行っているもので、国立研究開発法人水産研究・教育機構が、関係試験研究機関による資源調査結果等を踏まえて、主に近海カツオ一本釣り漁業やまき網漁業の対象となる夏秋季の常磐・三陸沖におけるカツオの来遊動向について見通しを示すものです。

 検討の結果、令和3年6~11月のカツオ来遊量は、「昨年を上回り、過去10年の平均並み」と予測されました。また、7月のカツオの主な分布域は、「海面水温が22~24度の範囲であり、かつ、深度20mにおいて水温が高くなる方向が東ないし南向きである海域」を基に予測されました。

1.来遊資源量指数

 5月上旬から下旬の竿釣りCPUE(※1)と6月以降の常磐・三陸沖のCPUEには、有意な相関関係があることがわかっています。この関係を用いて予測したところ、本年の常磐・三陸沖における6月以降の来遊資源量指数は「昨年を上回り、過去10年の平均並み」と予測されました(図1)。なお、昨年(2020年)の来遊資源量指数は、昨年(2020年)同時期の漁獲量および漁獲の主対象がカツオであった漁船の出漁日数が少なかったため、来遊資源量を正確に表していないことに留意が必要です。

図1. 過去10年間の6~11月の近海竿釣り船によるCPUEの経年変化と予測された2021年のCPUE水準 (赤マーカー)。図中の点線は過去10年間の平均値(2011~2020年)、赤領域は80%予測区間を示す。

※1 CPUE:Catch Per Unit Effort(1 日1 隻あたりの漁獲量)

2.主分布域(※2)

 カツオは主に暖水の張り出し及び暖水塊の北縁部西寄りに分布する傾向があります。水産研究・教育機構の海況予測システムのFRA-ROMSによる7月の予測水温データをもとに、7月のカツオの主分布域を予測しました(図2)。7月にカツオが多く分布するのは、海面水温が22~24度の範囲であり、かつ、深度20mにおいて水温が高くなる方向が東ないし南向きである海域です。

図2. 2021年7月のカツオ主分布域の予測

※2:主分布域は、10月の予測まで1ヶ月毎に予測します。

3.魚体

 2021年5月下旬現在、主に房総沖〜常磐沖に形成されている漁場で漁獲される魚体のサイズは尾叉長40~50cmが主体で、これから北上すると予想される尾叉長45cm前後の個体が漁獲されています。過去の体長組成の季節的推移から、尾叉長45cm(1.8kg前後)の個体が常磐・三陸沖に北上し、10〜11月には54cm前後、体重3.0kg前後の個体が漁獲の中心となると考えられます。