育種とは、生物を遺伝的に改良することであり、一般的な用語としての品種改良もこれに含まれます。育種部では、我が国の養殖業において重要な水産生物を対象に、産業的に、より好ましい特徴(成長が速い、病気に強い、少ない餌で育つ等)を持つ系統の作出(育種)を目的として研究開発を行っています。現在の代表的な選抜育種技術である「ゲノム選抜(ゲノミックセレクション)」のほか、新しい育種技術である「ゲノム編集技術」を活用した研究開発、作出した系統の維持管理に必要な基盤技術開発、さらに遺伝資源の保存事業も行っています。

育種部は、育種基盤グループと系統開発グループで構成されています。

育種基盤グループ

 主にブリやサケ・マス類などを対象に、成長が速い、病気に強いなどといった優良な形質を持つ系統を作出するため、DNA(ゲノム)情報を用いた選抜育種に取り組んでいます。また、ゲノム編集魚の生物多様性への影響に関する基礎的知見を集積しています。遺伝資源の保存事業では、国内での研究・教育用として要望された餌料用海産微細藻類の配布を行っています。

系統開発グループ

 主にブリを対象に、育種によって作出した優良系統の効率的な維持管理方法を確立するため、配偶子や生殖細胞の凍結保存・復元技術の開発に取り組んでいます。また、育種基盤グループとともに、選抜交配や形質評価を行い、育種産物の開発にも取り組んでいます。

選抜育種によるハダムシ寄生数の選抜効果
ブリ凍結精子の大容量保存システム