公表日:2019年12月5日

研究実施者:水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 村田裕子ほか

 ウニ国産食用種の生殖巣(可食部)中の遊離アミノ酸組成は,主に食用とされる成熟前および成熟初期では,甘味を呈するグリシンとアラニンが多いなど,種,雌雄に共通し,成熟の進行に伴う遊離アミノ酸組成の変化は,種,雌雄で違いがあることがわかりました。

 国内には,バフンウニ,アカウニ,ムラサキウニ,キタムラサキウニ,エゾバフンウニ,シラヒゲウニが食用種として漁獲されています。ウニの可食部である生殖巣中の呈味成分である遊離アミノ酸は,種や雌雄による違いがあるのか,成熟に伴いどのように変化するのか不明でした。本研究では,これらを解明いたしました。

 バフンウニとアカウニは配偶子形成前(成熟前)が主に食用になり,ムラサキウニ,キタムラサキウニ,エゾバフンウニ,シラヒゲウニは配偶子形成初期(成熟初期)が主に食用とされます。配偶子形成前のバフンウニとアカウニ,配偶子形成初期のムラサキウニ,エゾバフンウニ,キタムラサキウニ,シラヒゲウニでは雌雄にかかわらず,甘味を呈するグリシン(Gly)とアラニン(Ala)が多いなど,遊離アミノ酸組成は,雌雄でほぼ同じで,ウニの種でほぼ共通していることがわかりました。このことは,いずれの種でも共通した甘味のある美味しい味であることを支持する結果でした。一方,成熟の進行に伴い,バフンウニとアカウニで共に,Glyとスレオニンが増加傾向でArgとヒスチジンが減少傾向であるのに対し,Alaは,バフンウニで雌雄共増加傾向である一方,アカウニの雌では減少傾向,オスでは増減の傾向はみられないなど,種や雌雄による違いが見られました。

 近年,磯焼け海域で漁獲されるウニの味上げやウニ養殖の取組が増加しており,本結果が,ウニの養殖方法の開発や人工餌料開発における美味しさの評価につながることが期待できます。

 本研究は、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(魚介類の出荷前蓄養と環境馴致による高品質化システム技術開発)」によって実施しました。

 本成果は、Fisheries Science.86巻1号( 2020. 1) :DOI 10.1007/s12562-019-01388-y に掲載されました。

図1.食用6種の主に食用とされる成熟前または成熟初期の精巣(a)と卵巣(b)中に多く含まれている遊離アミノ酸の含量
図2.バフンウニとアカウニの精巣および卵巣中に含まれる各アミノ酸の成熟に伴う増減の傾向(赤矢印は増加、青矢印は減少、黒矢印は増減なしの傾向を示す)