公表日:2019 年 10 月 1 日

研究実施者:水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 渡邊龍一ほか

 現在、二枚貝に含まれる麻痺性貝毒の検査には、マウスを用いた動物試験が採用されています。下痢性貝毒については機器分析の導入が進んできていますが、麻痺性貝毒については、迅速かつ高精度な機器分析法が開発されていませんでした。そこで、本研究では、近年注目されている超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)を用い、高速かつ高感度に二枚貝中の麻痺性貝毒を分析できる手法を開発しました。

 国際的に基準値が設けられている貝毒のうち、日本国内で発生するのは麻痺性貝毒と下痢性貝毒です。下痢性貝毒の検査法は2017年には全面的にマウス毒性試験から機器分析法に移行しましたが、麻痺性貝毒については未だに動物試験を採用しています。その主な要因として動物試験に代わる迅速かつ高精度な分析法が開発されていないことが考えられます。

 そこで、当グループでは、超高速液体クロマトグラフィーに着目し、これを用いて、麻痺性貝毒のポストカラム蛍光検出法を開発しました(図1)。ポストカラム法はカラムで毒成分を分離後に蛍光化して検出する方法で、分析流路が複雑なため、超高速液体クロマトグラフィーによるポストカラム法は我々の知る限り報告がありませんでした。解決の鍵となったのは、カラムで分離した毒を酸化剤と混合し蛍光化させる部分に専用のミキサーを導入することでした。これにより混合効率が飛躍的に向上し、安定した蛍光を得ることができ、従来の方法と比べ、分析時間を2倍以上に短縮し、迅速かつ高精度な検出法を開発することに成功ました。この方法では、麻痺性貝毒公定法と同じ方法で抽出した二枚貝試料を分析することが可能です。

 本研究は、農林水産省「安全な農林水産物安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究:麻痺性貝毒の機器分析法の高度化およびスクリーニング法の開発」によって実施されました。

本成果は、Toxins 2019, 11, 573; doi:10.3390/toxins11100573 に掲載されました。

麻痺性貝毒を検出するための機器
麻痺性貝毒を検出するための超高速液体クロマトグラフィー/ポストカラム蛍光検出法の概略図(左)と実際のポストカラム反応系(右)